皆様が、リチウムイオン電池、アルカリ電池、鉛酸蓄電池、燃料電池、MOFなど、どのようなエネルギー貯蔵装置の仕事に携わっていても、性能と安全性の検討のために評価しなければならない重要な成分特性があります。

当社のParticle Testing Authorityは、電極や電解質、セパレータ/結合剤などの分析、さらには、製造後に異なる部品同士がどのように作用し機能するかといった品質の分析まで、皆様をサポートするための設備と専門技術を備えています。

電極の分析

正極材と負極材の開発は、電力密度やエネルギー密度の向上と、バッテリー寿命と充電サイクルの改善に必要な熱的/化学的な安定性を基本としています。

 

バッテリーの理論容量は、使用する材料によって決まります。 電極加工においては、粒子形態(粒子径、粒子形状、粉末密度、気孔率、表面積など)に対する知識が、電極の製造可能性と目的とする性能特性に重大な影響を与えます。

表面積

電極の表面積を増大させると、電気化学反応の効率が改善され、電極と電解質の間のイオン交換が促進されます。特に負極材内では、表面積の拡大によって、黒鉛粒子間のリチウムイオンへの拡散経路を短くできます。材料の表面積を少なくすることは、セルのサイクル性能を向上させることに適しているため、結果的にバッテリー寿命の延長につながります。

表面積を大きくすることには限界があり、それは、表面での電解質の劣化相互作用と、熱的安定性と共に結果として生じる容量損失に起因しています。ナノ粒子は、容量の損失なしで表面積を増大させることができると大いに期待されています。これは、急速充電を促進し、放電率の効率を高め、バッテリー容量を改善します。

細孔径、形状、分布、および曲路構造

電極の細孔の径、形状、および曲路構造は、こうした多孔質構造内に貯留された電解質を通過するリチウムイオンの移動速度に大きな影響を与えます。製造工程に由来する電極のミクロ構造は、リチウムイオンセルのエネルギー密度、電力、寿命、および信頼性に直接的な影響を及ぼします。

隣接する細孔、閉じた細孔、および製造工程で作られた溝の相互接続性についてより良く理解することが、電解質と電極の最適な相互作用を確保することに役立ちます。多孔質電極の曲路構造と電解質界面について知ることが、セルの性能限界がそのミクロ構造に起因しているかどうかの判断を可能にします。

気孔率の測定

電極の多孔質構造は、活物質と導電性希釈剤との間での粒子同士の接触に直接影響を与えます。気孔率をコントロールすることによって、より高い電極内導電率が実現され、適切な電子交換に加えて、(例えば)正極材のインターカレーションのために、リチウムイオンの電解質アクセス/移動にとって十分な細孔空間を確保することができます。インターカレーション時に気孔の閉塞/詰まりがあると、容量低下を引き起こす場合があります。

密度

黒鉛負極材の密度は、厳しい負荷や放電操作のもとでの劣化に対する負極材の耐久性に影響を与えます。負極材の粒子密度が高くなると、気孔が減少し、結果として、電極の活性表面積が減少します。これにより、電極と電解質の接触面積が縮小します。

真/絶対密度と包絡密度は、インターカレーションに利用可能な電極の気孔に起因する電気化学的性能の決定に役立ちます。不可逆容量と内部細孔容積との間には、明確な相関性が認められています。

タップ密度は、体積エネルギー密度の重要な指標です。タップ密度が低いと、体積エネルギー密度が低くなり、逆の場合は、体積エネルギー密度が高くなります。タップ密度を増大させると、より高密度の(単位体積あたりの活物質が多い)電極薄膜を、電極のコーティング用に製造できるようになります。

粒子径/粒子形状

粒子径は、容量、充放電サイクル、およびクーロン効率に影響を与えます。粒子径は、電極位置にインターカレートするリチウムイオンの固体拡散量に影響を与えます。粒子径を小さくすると、特にナノ粒子では、充放電サイクル時の体積変化が小さくなります。このことは、機械的応力の低減、硬さの増大、そして耐破壊性の向上に貢献します。

粒子径分布が広いと、単分散分布以上にエネルギー密度が増大する場合があると報告されています。粒子径分布を管理しカスタマイズすることで、高電力密度化(単分散粒子)または高エネルギー密度化(多分散粒子)を達成するための、カスタムチューニングが可能になります。

粒子形状は、充填密度などの特性に影響を与えます。球形粒子は繊維状粒子や片状粒子よりも高密度に充填できます。

セパレータ/結合剤/薄膜の評価

セパレータや薄膜は、電極から電極への電子の流れを阻止しながら、イオン流動を可能にします。基本的には、正極材から負極材を分離するためのものです。

代表的なセパレータは、ポリオレフィン(通常は、ポリプロピレン)と、他のポリマー、セラミック、セラミックとポリマーの混合物などでできています。 セパレータは高多孔質(一般に気孔率は40%超)であり、厚さは約25 μmで、低いイオン抵抗性を示します。 積層セパレータや複合セパレータは、セルの熱暴走を防止する安全装置として用いられます。

結合剤材料は、電極活物質の粒子同士を結合させるためと、粒子を集電体(正極材のアルミ箔、負極材の銅箔)と密着させるために使用されます。

ゼータ電位

セパレータ膜の移動機構について理解を深める上で、ゼータ電位が電解質膜の親和性の指標になります。これにより、バッテリー性能を微調整して、サイクル寿命を改善できます。

セパレータの電解抵抗が低くても、透水性が高いと、サイクル寿命は延びます。ゼータ電位は、膜の電解質添加剤との親和性についての必要な情報も与えます。

気孔率の測定

気孔率は、セパレータの合否基準における重要なパラメータです。セパレータは、負極材と正極材の間のイオン移動を担う液体電解質を保持するのに十分な細孔密度を有する必要があります。気孔率が高いということは、セル内の発生熱が少なく、エネルギー密度が高くなることを意味します。

気孔率が一様であることは、イオン流動のバラツキを防止する上で非常に重要です。セパレータ内のイオン流動のバラツキが大きいほど、電極表面での影響も大きくなり、サイクル寿命が大幅に低下してすぐに機能しなくなります。気孔率が過大であると、セパレータの細孔を閉じる能力が妨げられます。この能力は、バッテリーが過熱した際のシャットダウン機能に不可欠です。

細孔径、形状、分布、および曲路構造

セパレータの細孔径は、電極成分(電極活物質と導電性添加剤など)の粒子径より小さくなくてはなりません。多くのセパレータ膜は、粒子の侵入を阻止するサブミクロン単位の細孔径を有します。

細孔が一様分布で曲路構造であることも要件になります。一様分布であれば、セパレータ全体の電流分布が不均一になることもなく、曲路構造であれば、樹枝状リチウムの成長が抑止されます。

電解質の分析

市販のリチウムイオン電池では、液体電解質が、正極材と負極材の間でのリチウムイオン伝導を可能にするための重要な役割を担っています。最も一般に用いられている電解液は、LiPF6などのリチウム塩と有機溶媒から成っています。

電極の酸化を防止して、良好なサイクル寿命を促進するには、高純度であることが求められます。最終的な電解質溶液には、リチウム塩以外にも、様々な添加剤が含まれています。これらの添加剤は、LiPF6と混合されて、樹枝状リチウムの形成と溶液の劣化を防止しています。

ゼータ電位

セパレータと電解質の界面では、電荷分離に起因した動電現象が生じています。帯電した電解質溶液がセパレータの細孔を通じて拡散すると、界面位置では必然的にゼータ電位の影響を受けます。

そうした界面位置でのゼータ電位は、電解液がセパレータを横切って通過するのを妨げることもあれば、助けることもあります。ゼータ電位の値は、装置の電位安定性の指標となります。すなわち、値(正または負の値)が大きいほど、溶液の安定性は向上します。

製造および破損分析

製造前および製造中の材料特性評価は、セル部品や最終的に組み立てられたバッテリーの最適動作を保証する上で、非常に重要な制御パラメータを与えます。

原材料から、部品製造、そして組み立てられたバッテリー自体に至るまで、材料特性評価は、目的とする電気化学的性能、安全性、セルサイクルなどの重要パラメータの調査に決定的な役割を果たします。

粒子径/粒子形状 – 原材料

粒子径と粒子形状は、充填密度に影響するため、電極の厚み、ひいてはエネルギー密度に影響を与えます。

黒鉛の粒子径分布とコーティングされた箔の粒子配向は、どちらも黒鉛負極材の電気化学的性能に影響を与えることが証明されています。純度も重要な問題であり、電極メーカーで使用されるすべての粉体と添加剤は、金属不純物を低レベルに維持する必要があります。

性能劣化

セルの全寿命にわたる様々な物理的および電気化学的な出来事が、性能劣化の一因になり得ます。この性能低下は、特に、充放電サイクル時の容量低下や保存可能期間の短縮という形で現れます。

膨張収縮は、電極性能に悪影響が及ぼす界面応力を引き起こし、それが界面剥離の生じるレベルに達すると、電極材と集電体との接触部を減少させます。この機械的破損によって細孔径が変化する場合もあり、それによって電解質の接触面が減少し、サイクル特性が低下します。

DSCやTGAなどの温度プログラム法を利用すると、可能性のある過熱条件を調査できます。

カレンダー加工/固体分率の決定

カレンダー加工は、高性能電極の製造における最も重要なステップです。カレンダー加工を重ねると、電極薄膜の気孔率と厚みが減少します。また、カレンダー加工によって電極の細孔構造が変化すると予想されるので、それが電解液による薄膜の濡れ挙動にも影響を与えます。

最適なレベルを超えてカレンダー加工を行うと、気孔率と平均細孔径が減少し、その結果、不可逆容量の損失、高レートのサイクル、そしてサイクル性能の寿命低下を招く恐れがあります。ローラーコンパクション操作で用いられる制御パラメータの1つに「固体分率」があります。この制御パラメータは、ローラーコンパクターの速度、圧力、およびニップ角の最適な設定値を決定することに役立ちます。固体分率を重要品質特性として使用することにより、ロット間で一貫した製品が保証されると共に、計画された望ましい電気化学的性能を有する最終製品が得られます。

PTAでは、原材料の粉体流動性を評価して、円滑な処理を保証することや、完成した電極薄膜の特性評価を行うことが可能です。